なるほど資産運用

人気FPが教える運用術 第5回 外貨預金の活用法2 短期で稼ぎたい! でもFXはちょっと…という方へ ファイナンシャル・プランナー 廣澤知子

将来に備えての蓄えをしていますか?

外貨建てで資産を保有することの大切さ、またその際のポイントについて、ファイナンシャル・プランナーの廣澤知子先生にお話しいただきました。

外貨の売買で差益を稼ぐといえばFX取引と思われるでしょうか。
FX取引は外貨売買をするための金融商品ですから、その仕組みを理解し、慣れた人であれば、取引を楽しみつつ、かつ利益を狙うことができます。
ただし、そのリスクは大きくなりやすく、やり方次第で手痛いダメージにつながる可能性もあります。また、取引ルールは株式の信用取引にも似ており、ハードルの高さを感じる方もいることでしょう。

そのFX取引が個人投資家向けに作られた歴史は長いものではなく、広く利用されるようになったのはここ10数年のことです。それ以前は個人向けの外貨売買といえば海外旅行のためか、一部の銀行での外貨預金や外貨送金くらいでした。
当時、為替ディーラーの中には、仕事で向き合う為替市場に魅せられ、そのチャンスを生かすために外貨預金を活用した人も多くいました。ドル高円安になると思えばドルを買い、期待通りに上昇すればドルを売ることで為替差益を得るのですが、その頃、為替レートは1日1回の公示(大きく動くと場合によってはレート変更あり)のみ、取引は金融機関の窓口に限られ、手数料も一律で片道米ドル1ドルにつき1円、往復で2円かかりました。つまり2日以上かけて、思ったように2円以上円安にならない限り差益は狙えなかったのです。しかも銀行の窓口の開いている時間に取引に行く必要がありました。

その頃から比べれば、現在の外貨預金は短期取引にも十分に耐えうる商品へと進化しました。手数料は自由化され、為替レートは市場にあわせて随時変更、そして何よりネット取引が普及したことで利用者の手間をかけることなく、時間に縛られることはなくなりました。しかも注文方法にも様々な種類があり、FX取引に近い環境で外貨売買ができるようになったのです。

外貨預金を利用して為替差益を求める活用方法において、取引に向く方、メリット、デメリットについて説明しましょう。

取引に向く方
  • ネット取引が可能な方(時間制限なくチャンスを生かした取引が行えるため)
  • 証拠金を置いたり、レバレッジ(てこの原理:自己資金の何倍もの金額の取引ができる)をかける取引はしたくない方
  • 分刻みのような超短期取引は求めず、チャンスがあれば手軽に為替差益も狙いたい方
メリット
  • ネット銀行の外貨預金であれば、現在米ドルの片道手数料は5〜25銭程度。FX取引では1銭が多いのですが、往復10〜50銭であれば為替変動の中で利益を狙うのは決して難しくありません。
  • FX取引より心理的にも技術的にも、はるかに手軽に始められます。(より手数料の安いところを選ぶこともポイント)
  • FX取引と同様の指値や逆指値といった為替レートの注文ができます。
デメリット
  • 為替差益を得るには円高で買って円安で売った時のみです。外貨を売りから始めることができないからです。
  • FX取引のようなレバレッジはかけられませんので、取引は自己資金内に限ります。

為替の動きを見ていると「トレンドは明らかに円安方向」と非常にわかりやすい時期があります。そんな時に手軽にFX取引のように為替差益を狙うことができるのが外貨預金の魅力の一つとも言えますね。

今回のポイント
外貨預金でもFX取引に近い環境で為替差益を狙える。
為替利益を狙うには円高で買って円安で売る。
筆者プロフィール

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー
慶應義塾大学経済学部卒。シティバンク東京支店でエマージング・マーケット、金融法人向けの外国為替のセールスなどに従事。独立系FP会社にてFPとして活動した後、(株)マネックス・ユニバーシティの設立に参画、個人投資家の啓蒙に努める。独立後は各種コラム連載、セミナー講師、雑誌・TV出演などで活躍中。初心者にやさしい解説には定評あり。

著書:『金利をやさしく教えてくれる本』(あさ出版)ほか
(社)日本証券アナリスト協会検定会員、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士