なるほど資産運用

人気FPが教える運用術 第4回 外貨預金の活用法1 外貨で長期運用 外貨をうまく使いこなしたい方へ ファイナンシャル・プランナー 廣澤知子

将来に備えての蓄えをしていますか?

外貨建てで資産を保有することの大切さ、またその際のポイントについて、ファイナンシャル・プランナーの廣澤知子先生にお話しいただきました。

外貨の保有と聞くと短期間、もしくは一時的と思われるでしょうか。
実際の紙幣やコインであれば、「海外旅行のためだけ。旅行中に使い切ってしまおう。」と帰りの免税店で有り金全部をお土産に注ぎ込んでいるような人、いらっしゃいますよね。
運用する場合でも、短期で売買して為替差益を狙うFXのイメージが強いかもしれません。
自分の資産の一部を常に外貨にしておくというと、不安を感じる方もいることでしょう。
今回は、第3回でもちらっと触れた複利効果など、長期で外貨保有することのメリットを中心にお伝えしたいと思います。

ところで皆さんは、利子(利息)の付き方には単利と複利の2種類あることをご存じですか。この二つ、実は結果に大きな違いがあります。
単利というのは、当初元本に対してのみ利子がつく計算をします。
それに対して複利は、運用期間中において発生した利子を元本に組み入れ、その合計を新たな元本として次期の利子を計算します。増えた元本に利率をかけるわけですから利子はより大きくなりますよね。具体的には下記の表とグラフをご覧ください。

3%で運用した場合(税金については考慮せず)

単利

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スタート 1年後 2年後 3年後 5年後 10年後
元本 1,000,000 1,000,000 1,000,000 1,000,000 1,000,000 1,000,000
利子 30,000 30,000 30,000 30,000 30,000
合計 1,000,000 1,030,000 1,060,000 1,090,000 1,150,000 1,300,000
複利

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スタート 1年後 2年後 3年後 5年後 10年後
元本 1,000,000 1,000,000 1,030,000 1,060,900 1,125,509 1,304,773
利子 30,000 30,900 31,827 33,765 39,143
合計 1,000,000 1,030,000 1,060,900 1,092,727 1,159,274 1,343,916

時間が経てば経つほど、お金の増え方に差が出てきますよね。
また、複利でも1年ごとよりは半年ごと、半年ごとよりは四半期ごとといったように、短い複利サイクルの方が、より短期間で元本を増やしてくれ、有利です。

どんな通貨で運用するとしても単利よりは複利、そしてより長期に継続することがお金を増やす効果が高いのです。最近は世界的な低金利のため、日本円に比べ外貨の金利が圧倒的に高金利というほどのことはありませんが、少しでも利率が高ければ、将来の差はより大きくなってきます。

外貨を長期間保有すれば、その間ずっと「為替リスク」にさらされることになるのは事実です。
でもそれはマイナスの意味だけではありません。円安になれば、その分為替差益という大きなプラスをもたらしてくれます。
為替変動による資産の動きについては、前回書いたポートフォリオの考え方をもう少し詳しく見てみましょう。

円高になると、保有している外貨の「円換算額」が減ったと焦る方が多いです。でもそれは手元にある円の価値が世界の中で高くなっているということで、輸入品を安く買える、つまり資産に対する購買力という意味では海外のものに対して高くなっているのです。
逆に円安になると、輸入品を買うときや海外旅行をするときに、より多くの「円」を支払うことになります。日本では生活必需品の多くを輸入品に頼っていますので、生活を直撃することにもなりかねません。そんな時、外貨を保有していれば為替差益が出ているため、資産へのダメージは少なくなりますよね。
日々の生活にかかるお金と運用中の資産とを切り離して考えていることも多いと思いますが、自分にかかわる全てのお金を合わせてみると、損得が良く見えてくるものです。

為替は常に変動し、ペアの片側の通貨が上がれば、もう一方の通貨は下がるといった関係です。通貨を組み合わせて保有することで、長い目で見て大幅な資産価値の下落を避け、長期間運用することによる複利効果により、より高い運用成果を期待できるのです。
長期で保有する場合は特に、できるだけ政情不安等の少ない、市場がしっかりとしている(突然通貨規制などが起こらない)通貨を選びましょう。

今回のポイント
時間を武器に、複利を味方に元本を育てる。
外貨を資産の一部にすることで、資産全体のリスクを軽減。
筆者プロフィール

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー
慶應義塾大学経済学部卒。シティバンク東京支店でエマージング・マーケット、金融法人向けの外国為替のセールスなどに従事。独立系FP会社にてFPとして活動した後、(株)マネックス・ユニバーシティの設立に参画、個人投資家の啓蒙に努める。独立後は各種コラム連載、セミナー講師、雑誌・TV出演などで活躍中。初心者にやさしい解説には定評あり。

著書:『金利をやさしく教えてくれる本』(あさ出版)ほか
(社)日本証券アナリスト協会検定会員、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士