なるほど資産運用

第2回 人気FPが教える運用術 外国為替のいろは 知ってると知らないとでは大きな差 基本を押さえておきたい方へ ファイナンシャル・プランナー 廣澤知子

将来に備えての蓄えをしていますか?

外貨建てで資産を保有することの大切さ、またその際のポイントについて、ファイナンシャル・プランナーの廣澤知子先生にお話しいただきました。

さて、そもそも外国為替とは何でしょう?
外国為替というのは2国間の通貨を交換する(売買)ことで、その交換比率(=価格)が「為替レート」です。ですからゼロになることはないということですね。

外国為替の特徴の一つが、その価格は「一価」ではないということ。
同じ市場で取引されていても、同一時点で例えばドル円の価格は各金融機関で必ずしも同じレートではありませんし、売値と買値が同時に存在します。銀行の外貨預金でいえば、TTS(=預け入れ)とTTB(=払い戻し)ですね。この売値と買値の差も一定と決まっているわけではありません。この差の部分が手数料に相当する部分でもあるため、金融機関を比較するポイントにもなってきます。

為替レートは為替市場での取引により決まりますが、株式と同様、市場での取引なのでレートは様々な要因で変動します。
ある通貨を購入した後に、円の価値が下がれば(=円安)購入した通貨の価値が円建てで上昇したことになります。これを「為替差益」と呼び、外貨預金を保有していたときに利益として得られる金利分をはるかに超える利益が短期間で得られることもあります。
ただし、逆に円の価値が上がる(=円高)ときは、購入通貨の価値が下がり円建てに換算すると購入価格を下回ることにもなります。これは「為替差損」です。購入した通貨建てで見れば元本割れはしませんが、たとえ預金であっても円建てに換算したときに元本割れになる可能性があることは理解が必要ですね。

その為替レートが変動する理由については下記表をご参照ください。為替レートの変動要因や為替の影響で他市場が変動する点などを簡単に表にまとめてみました。

要因
金利変動/金融政策 利上げがあると一般的にその通貨は買われる。
株価変動 輸出企業が多い日本では円安になると株価が上昇する。
商品市況 一般に金が買われると米ドルが売られる。
マクロ経済
「購買力平価」「国際収支」
長期的に為替レートは自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定されると言われる。
経済指標の発表 その国の経済状況が強ければその通貨は買われる。
要人発言 介入の示唆であったり、要人の発言によって変動する。
市場介入
(中央銀行)
中央銀行による市場介入によって変動する。(例えば円高を阻止するためには日本銀行が市場で大量の円売りをする。)
テロ・戦争・紛争などの地政学的影響 地政学的リスクが発生するとその地域、エリアと関連すると思われる、地理的に近いといった国の通貨も売られる。有事のドルといって、米ドルが買われることもある。
テクニカル要因 チャートの動きを見て為替の動きを分析、投資をするのがチャーティスト(テクニカル・アナリスト)。それらの人がポイントだと思うところで売買することで市場全体が変動することもある。
うわさ(心理的なもの) 市場では様々なうわさや憶測が飛び交い、それによって為替レートが変動することもある。

通常はこうした要因が複合的に組み合わさって影響を与え合います。
また市場では「旬なテーマ」というのが存在することが多く、市場参加者が最も関心を持っているニュース等のことで、そうした大きいテーマがあるときは他のニュースに反応が薄くなることもあります。

また、日本においては主に外国通貨対円という取引が多いのですが、世界の市場では米ドルが基軸通貨であり、主要な通貨ペアは対米ドルです。
対円のレートはクロス円レートと呼ばれ、その中身は対ドルのレートとドル円の合成レートであるため、対円のレートは対ドルのレートの影響も大きく受けることになります。
例えば「南アフリカランド/円」は、「ドル/円」と「ドル/南アフリカランド」の二つの為替レートの影響を受けるということです。

外貨を購入することはその通貨の持つ金利(超低金利の日本の金利よりは高金利であることも)を得ることができるだけではなく、その通貨の動きによっては差益を得ることもできます(もちろん差損になることもありますが)。また、そうした通貨の値動きを追うことで世界の経済の動きを肌で知る、投資について学んでいけるという魅力もあると言えますね。

今回のポイント
外国為替は市場で取引されるため、為替レートは常に様々な要因で動いていること。
私たちが目にする様々な対円の通貨のレートは、多くがドル円の影響を受けていること。
筆者プロフィール

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー
慶應義塾大学経済学部卒。シティバンク東京支店でエマージング・マーケット、金融法人向けの外国為替のセールスなどに従事。独立系FP会社にてFPとして活動した後、(株)マネックス・ユニバーシティの設立に参画、個人投資家の啓蒙に努める。独立後は各種コラム連載、セミナー講師、雑誌・TV出演などで活躍中。初心者にやさしい解説には定評あり。

著書:『金利をやさしく教えてくれる本』(あさ出版)ほか
(社)日本証券アナリスト協会検定会員、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士