なるほど資産運用
将来に備えての蓄えをしていますか?
外貨建てで資産を保有することの大切さ、またその際のポイントについて、ファイナンシャル・プランナーの廣澤知子先生にお話しいただきました。
「資産運用」という言葉から、「お金持ちのすること」「難しそう」と敬遠するのはもったいないことです。
第1回でも書きましたが、お金を増やす効果的な手段の一つが「お金に働いてもらうこと」。
運用は実はほんの少額からでもスタートすることができ、かつ早く始めれば始めるほど、より一層効果的です。時間を味方につけることで再投資・複利の効果は大きくなるからです。
もう一点、大切なポイントとして「リスクとリターン」を挙げました。
リスクがなければリターンは得られないというシーソーのような関係の中で、いかにリスクをバランスよく取り入れ、小さく抑えるかが重要です。
リスクの種類は金融商品によって異なり、金融商品の価値の動き(値動き)も異なります。
金融商品の主なリスク | |
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価格変動リスク | 株式等の市場価格が変動するリスク |
為替リスク | 為替レートの変化によって円換算した外貨建て資産の価値が変動するリスク |
金利変動リスク | 金利変動による価格変化(債券等)のリスク |
信用リスク | 発行者、預け先機関等の経営・財務状況により支払能力が変化するリスク |
流動性リスク | 相場が荒れることで売りたい時に価格がつかないなどの流動性の状況から売却が困難になる、価格が急落するなどのリスク |
インフレリスク | インフレ(物価上昇)によって金融資産の利回りが物価上昇率を下回るリスク |
ソブリン(カントリー)リスク | 投資先の国や地域の政治的、経済的要因によって元利金の支払いが遅れたり、支払われなくなったりするリスク |
リスクに種類があるだけではなく、景気や金利状況に対して株式と債券、金や原油などの反応(値動き)は異なります。同じ状況下で上がるもの、下がるものそれぞれなのです。
こうした種類の異なる金融商品を保有することによって、お互いの値動きを補完する関係となり、どれかが利益を出しているときはどれかがマイナスになり、結果、大きな利益にはならないかもしれませんが、大きな損失も出にくくなるのです。
これが「ポートフォリオ」(=分散投資の組み合わせ)の考え方です。
一般的には国内外の株式、債券等を組み合わせ、その他に流動性資産(預貯金などのすぐに使えるお金)をもつのが基本です。
ポートフォリオを作成するときは、期待利回り(年平均でどの程度の利益が出るのかを想定したもの)と運用期間等から組み合わせを考えます。もう一つ大切なのは、個々人による「リスク許容度」です。為替の動きは気にならないけれど、株式の値動きは不安になる……という人もいます。ちょっと値動きしてすぐに利益確定したい人もいれば、長期投資で考えて値動きに多少の値動きに構えていられる人もいますよね。自分自身はどのタイプか考えてみましょう。
ポートフォリオを作成する基本的な手順は以下になります。
ポートフォリオ作成手順 | |
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1 | 何年の運用期間があるのか。 |
2 | それまでにいくらにしたいのか。(今運用できる資金はどれだけあるか。) |
3 | 1と2から必要な利回りを計算する。 |
4 | 3の利回りを実現するために組み入れるべき金融商品を考える。 |
5 | 自分自身がどういうタイプのリスクをどれくらい取れるのかを確認する。 |
6 | 4の金融商品をどの程度の割合で保有するか、5を念頭に決める。 =ポートフォリオの完成 |
7 | 定期的(少なくとも1年に1度)にポートフォリオを見直す。 |
7は投資・運用を始めてからのことですが、これはとても大切な点です。投資は放っておいてはダメで定期的にメンテナンスすることが長く続けられる秘訣です。
上述したように日本の金融商品だけに偏らず、外貨建てのものを組み入れることによってリスクの低減とリターンアップの両方を期待できます。
ただし、外国と一言でいっても安全性が比較的高い先進国と成長性に期待のできる新興諸国とは投資タイプが大きく異なります。
高金利でも、経済が高成長のせいなのか、通貨安防止のために高金利政策をとっている(新興国で見受けられます)のかを区別する必要がありますし、流動性が少なく為替変動の大きい通貨もあります。投資対象国やタイプは偏らないよう、初めは情報も十分にあり、ニュースや新聞でもその国の経済状況が把握できる米ドルやユーロ、豪ドルといったあたりから始めるのがわかりやすいでしょう。
- 今回のポイント
- 国内外の様々な金融商品を組み合わせたポートフォリオを作ることで、リスクを低減。
自分の「リスク許容度」を知ることが大切。
- 筆者プロフィール
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廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
慶應義塾大学経済学部卒。シティバンク東京支店でエマージング・マーケット、金融法人向けの外国為替のセールスなどに従事。独立系FP会社にてFPとして活動した後、(株)マネックス・ユニバーシティの設立に参画、個人投資家の啓蒙に努める。独立後は各種コラム連載、セミナー講師、雑誌・TV出演などで活躍中。初心者にやさしい解説には定評あり。著書:『金利をやさしく教えてくれる本』(あさ出版)ほか
(社)日本証券アナリスト協会検定会員、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士